甲状腺のはれ・甲状腺腫大(甲状腺腫)について

近年、検診や人間ドックの普及により、甲状腺のはれ(甲状腺腫)を指摘される方が増えています。
甲状腺腫大は、①全体がはれる場合(びまん性甲状腺腫)と、②しこりではれる場合(結節性甲状腺腫)の2つに分類されます。
①の場合は橋本病やバセドウ病の可能性、②の場合は甲状腺腫瘍の可能性があり、甲状腺超音波(エコー)検査と採血検査で、診断を行います。

バセドウ病について

バセドウ病は、自己免疫の異常により、甲状腺を刺激する物質(TSH受容体抗体、TSHレセプター抗体、TRAbなどと呼ばれています)が血液中に作られ、その作用により、甲状腺が活発になりすぎ甲状腺ホルモン(FT3,FT4)が過剰となる病気です。当院では、FT3、FT4、TSHの甲状腺機能はもちろんTRAbも院内で測定が可能であり、その日のうちに結果が判明します。(静岡県東部でTRAbの院内測定を行っている医療機関は他にほとんどありません)甲状腺ホルモンはからだの成長発育やエネルギー代謝に必要なホルモンで、これが過剰になると、安静にしていても常に走っているような状態となり動悸や息切れ、発汗、疲れなどの症状がひどくなっていきます。治療をすればまず改善しますが、治療をせずに悪化させた場合、命にかかわることがありますので、絶対に治療を自分で 中断することは止めましょう。

バセドウ病の治療について

バセドウ病の治療については、①薬物療法 ②放射性ヨード療法 ③手術療法の3つがありますが、当院では①の薬物療法を行いますが、②③の治療が必要な方は、治療経験豊富な他の専門医療機関をご紹介致します。
①薬物療法は抗甲状腺薬といわれる内服薬を用いる方法で、わが国では広く一般的に用いられている方法です。短所としては薬物の副作用の危険性(特に開始、再開後の2〜3カ月の間に多い)がある、継続として定期的な病院の受診が必要である、などが挙げられます。②放射性ヨード療法はアイソトープ治療ともいわれ、アメリカなどでは一般的な治療です。甲状腺の原料であるヨードを放射性物質に変化させた薬剤(放射性ヨード)を飲むことで、それが甲状腺に取り込まれ、甲状腺細胞を減少させることによりホルモン合成の活動能も低下させます。うまくいけば1回の治療で終了することができますが、コントロールが難しい方の場合何回も必要になる場合もあります。短所としては放射性物質を用いるので、治療を行える施設が限られること(静岡県東部にはなく静岡市・神奈川県・東京都などの県立病院や大学病院で治療を受けることになります)、妊婦・近い将来(6か月以内)妊娠を考えている方・授乳中・18歳以下の方は禁忌であることなどが挙げられます。また、長期間経過を診た場合ある一定の割合で機能低下症になることが知られており(10年で40%)、その場合甲状腺ホルモンの補充療法が生涯必要となります。但し、機能低下症の場合は補充療法をきちんと行っていくと非常に安定し副作用もまずありませんので、それほど心配する必要はありません。③手術療法は、甲状腺を切除することにより、早期に確実な効果を得ることができます。切除するので大きな甲状腺腫も小さくできますが、個人差はあるが手術の痕が残る、入院のため一時的な費用負担が大きい、反回神経麻痺、機能低下症など術後の合併症の可能性があるなどの短所が挙げられます。

橋本病(慢性甲状腺炎)について

橋本病は、自己免疫の異常により、甲状腺が慢性的な炎症を起こす病気です。甲状腺の自己免疫異常は抗サイログロブリン抗体(TgAb、Tg抗体)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb、抗TPO抗体)など甲状腺自己抗体といわれる検査で確かめることができ、これが原因で甲状腺に炎症がおこり、甲状腺が腫れたり機能異常を起こしたりします。この病気は特に女性が多く、男性患者の15ないし30倍にのぼるといわれ、40歳以上の女性では13人に1人がこの病気であるとの調査結果があります。基本的に治るという種類の病気ではなく、一生お付き合いをしていく病気と考えてください。大半の方は、甲状腺がはれる(はれても窒息することはありません)だけで特に治療は必要ない場合がほとんどですが、なかには甲状腺ホルモン異常(甲状腺機能低下症)をきたし治療が必要になる方もいます。
現在甲状腺機能は正常でも、将来異常が出てくる場合がありますので、できれば定期的に(数か月から1,2年に1回程度)医療機関を受診し、検査を受けてください。また、下記に述べている症状や甲状腺が急激に大きくなる、甲状腺に痛みが生じるなどの症状が出現した場合も、できるだけ早く内分泌科専門医(ホルモンの病気の専門医)か甲状腺科を受診してください。

甲状腺機能低下症

自覚症状:
便秘、脱毛、皮膚乾燥、疲れやすい、生理不順、寒がり、むくみ、声のかすれ、無気力(食欲がないのに)体重増加などがあります。高齢の方では、ボーとしている、物忘れがひどいなど単なる老化現象やひどい場合は認知症と思われていたところ、治療を開始したら症状が改善したという例もあります。
一般の血液検査など:
コレステロールが高くなったり、貧血や筋肉、肝臓の病気、徐脈性不整脈(脈が遅くなる不整脈のことです、洞性徐脈ともいいます)が疑われたりすることがあります。健康診断などでこれらの異常をいわれた場合甲状腺ホルモンが低くなっている場合があります。

甲状腺腫瘍について

甲状腺のしこり(結節性甲状腺腫)には、①のう胞、②良性腫瘍、③過形成(腺腫様甲状腺腫)、④悪性腫瘍があり、甲状腺超音波(エコー)検査と採血検査、及び必要に応じてエコー下に穿刺吸引細胞診を行い診断を行います。手術などの治療が必要な場合は経験豊富な専門治療機関(甲状腺外科、頭頸部外科)をご紹介致します。

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